12/19(土)BOOK LOVER’S HOLIDAY in 下北沢 BONUS TRACK 出店

下北沢のステキプレイス、BONUS TRACK にて

12月19日(土)開催の本のマーケット

BOOK LOVER’S HOLIDAY に出店いたします!

日時 12/19(日)12:00〜18:00

場所 BONUS TRACK ▼地図リンク

www.google.com

 

 

そして!今回、マルジナリア書店ブースには

ステキなゲストにお越し頂く予定です!

 

『マザリング 現代の母なる場所』著者の中村佑子さん15:30頃〜(約15分程度)

www.hanmoto.com

 

『猫のミーラ』著者の井上奈奈さん15:45頃〜(約15分程度)

www.hanmoto.com

 

『あんぱん ジャムパン クリームパン 女三人モヤモヤ日記』著者の牟田都子さん16:00頃〜(約15分程度)

www.akishobo.com

 

サインのご要望などにお応え頂けますので、

ステキなゲストに会いにぜひいらしてください!

 

※当日の天候、ゲストのご体調や社会状況により、予定は変更する可能性がございます

『猫のミーラ』展示のお知らせ

ネコへの慈しみ、フリーダ・カーロへのオマージュが交差する美しい絵本、『猫のミーラ』。

冬の原画展巡回を開始します!

大阪 12月9日-1月11日 スタンダードブックストア
東京 1月15日-2月15日 NENOi
広島 2月18日-終了日調整中 羅秀夢 (ラシューム) 
 
各店舗での開催時間や詳細については、また追ってお知らせいたします。
お楽しみに!
(コロナ禍などの状況変化によって、開催期間などは変更の可能性もございます。都度ご案内いたしますので、お出かけの際は事前のご確認をお願いいたします)
 
取材のご要望などは よはく舎(メールアドレス:yorunoyohaku【@】gmail.com)までお願いいたします。
 

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GACCOH全国出張版 東京編 「やっぱり知りたい!西周」 ふりかえり座談会

石井雅巳(いしい・まさみ) 津和野町町長付/講座コーディネーター
小林えみ(こばやし・えみ) よはく舎代表
太田陽博(おおた・あきひろ)GACCOH代表

※この記事はGACCOHのnote掲載記事と同じ内容です

※関連記事 2017/09/17【やっぱり知りたい!西周】ナビゲーターからのコメント

◆反省!反省!

小林 GACCOH全国出張版 東京編「やっぱり知りたい!西周」講座、全3回終わりましたね! 石井さん、太田さん、おつかれさまでした。
石井 本当におつかれさまでした。
太田 本当に本当におつかれさまでした。
小林 会場が、とってもかわいい絵本専門店「ブックハウスカフェ」さんで、西周講座という(笑)。でも広さや駅からの近さが、開催側・受講生の方にとってもよかったのではないかと。
石井 なかなかファンシーな空間でした(笑)。でもアクセスや規模感も良かったですね。
太田 絵本専門の本屋さんで西周講座って、なかなかない組み合わせで、そういうのいいと思います。
小林 「映画見に来たんだけど、時間があいたから参加していっていいですか」という当日参加のお客様がいらして、実はそういう「講座を知らなかった」お客様もちらほらいらしたんですよね。これはとてもビックリしましたし、そういう出会いがあるのは本当に嬉しいことです。
石井 当日飛び込みの方はあまりいないんじゃないかと予想していましたが、結構いらして、それは私も嬉しい驚きでした。
小林 お客さんは、特に初回は1週間前での予約が10名強くらいでしたっけ? ちょっと大丈夫かなあ、という不安がありましたよね。でも当日は満員御礼でギュウギュウになりました!
石井 いやあ、GACCOHさん初の東京編ということで、ここでコケたら申し訳ないと思っていたので、前日までは正直胃が痛かったです(笑)。
太田 それは私もそうで、コケたら京都に引きこもる予定でした。
小林 私も調子いいこと言って、太田さんにお声かけした手前、胃が痛かった(笑)。三人ともキリキリしていたということで(笑)。
太田 共催イベントってこれまであまり行っていなくて、いつもなら参加者が少なくても「自分の収入が減る……」くらいでしか思ってなかったのですが、今回は小林さんとの共催ですし、石井さんは津和野からはるばる来ていただいているわけで……、その点いつもよりプレッシャーありましたね。
石井 そんなこんなでお二人の宣伝のお陰もあって、多くの方に来ていただけたわけですが、本当に良い参加者の方々に恵まれたなあと思っています。
小林 そうですね。そして、まず企画の成り立ちについて。
 ナビゲーターの石井さんは私から太田さんへご紹介しました。私は、それまで石井さんとは少し面識がある程度だったのですが、「ツワノシゴト模様」の「第1編:博士課程に進めなかった”哲学”研究者。「森鴎外」「西周」の故郷・津和野へ行く【『地方』×『研究者』】」というウェブ記事で石井さんの近況を知り、そこで雑誌『POSSE(ポッセ)』vol.36からの連載「それぞれの町で」で、地域で仕事をすることについてインタビューをさせて頂きました。そこで西周を研究されているということが面白いなと思って、私自身が石井さんからもう少し西周の話を聞きたいな、と思ったんです。
 GACCOHについては、それまでもSNSや著者などを通じて、面白い講座をされているなあ、ということを見聞きしていて、今回の西周講座の後になりましたが、いま企画が進行しているnyx×GACCOHの講座でGACCOHさんとコラボしたいな、ということをその少し前から考えていたんですね。だったら石井さんの西周もGACCOHさんとコラボで講座やっていただければいいんじゃないか、ということで太田さん・石井さんにご相談したんです。
 石井さんは津和野におられたので、距離的には、京都開催か東京開催かは決めていなくて、結局石井さんもお仕事としては東京の方が用事は多いし、まずは東京でやってみようかということになって。そのあたり、お二人はこの企画が持ち上がったとき、どんな受け止め方だったんでしょうか。
石井 私は率直に嬉しかったです。実はこれまで津和野町の東京事務所(Tsuwano T-space)で西周の入門講座を主催していました。元々は、山本貴光さんの『「百学連環」を読む』(三省堂)が出版されるのを知って、これしかない!と閃いて、山本さんに刊行記念のイベントを持ちかけたのがきっかけでした。その際は、私以外に山本さんと津和野の郷土史家である山岡浩二さんにも登壇していただき、参加費もかなり抑えて実施しました。今回は私一人でしたし、それなりのお金もいただくことになるので、嬉しいけれど、来てくれるかしらとビクビクしていました。
小林 私、何か企画するとき、すぐ根拠なく「大丈夫大丈夫!」って言っちゃうからなあ(笑)。心配するのは、いつもまわりの方という……(笑)。笑、じゃなくて申し訳ない!
石井 私にとって西周は副専門であり、当然これまでの実績もなかったわけで……、小林さんのその「えいや!」がなければ実現しえなかったので、ありがたかったです。
太田 私は普段は京都の自前のスペースでやっているのですが、スペースを持っているのは長所でもあり短所でもあると思っていて、常々GACCOH以外の場所、地域でもやらなあかんなと考えていたので、小林さんにお声掛け戴いた時、これはいい機会だと思いましたし、二つ返事でしたね。
小林 東京でのイベントであれば、自分だけで開催することもできるのですが、GACCOHという講座の枠組み・デザインの魅力をとても感じていて、その力を借りたかったし、同時にGACCOHをもっと多くの人に知ってもらいたいな、というのもありました。
石井 私も関西の知り合いの研究者がGACCOHさんで「やっぱり知りたい!」シリーズを担当していたので、以前から興味深く見ていました。いわゆる教養講座は色々ありますが、若手研究者に活躍の機会を与えてくれる場所というのは貴重ですし、こうした新しい取り組みがもっともっと盛り上がるといいなと思っていたところでした。そんな講座に私も参加できるのは光栄でした。
小林 石井さんの知識については、お話する中で伺っていますが、講義されるのを私も見たことがないので、講座としては冒険の部分もあったというのが正直なところでした。
 ただ、その点についてもGACCOHの「やっぱり知りたい!」シリーズは、若手の研究者の方が教育実習の場が少ない中で、講師も参加者も初心者としてお互い「やっぱり知りたい!」を共有するフレッシュさとお互いの新しい発見というのが、ポイントなのだと思っています。
 ただ、実際に石井さんの講義を見たら、すごいお話がうまくてねー(笑)。びっくりしました(笑)。
 きちんと緩急つけて資料をみせて、時々笑いもとって、お客さんを飽きさせない(笑)。石井さんの講師力が発揮されたんじゃないかな、という(笑)。

 

◆GACCOHの魅力

小林 GACCOHさんの良い特徴のひとつが、太田さんによるヴィジュアルですが、今回はどのように制作されたのでしょうか。

太田 あれは石井さんに「若き日の西周」、「晩年の西周肖像画」、二枚の写真を参考資料としていただいて、その二枚のギャップがおもしろかったんですね。若き日の写真の西周は自身に満ちた表情で正面をスッと見ている、それに対して晩年の肖像画西周はなんともいえない苦々しい表情で目線は少し下を向いている。その二枚を見比べていると、この間西周に色々あったんやろなと。ということでポスターの中心に二枚の西周をシンプルに並べてみようと思いました。
石井 本当にかっこいいポスターを作成していただたと思っています。講座でも説明した通り、西周という人は幕臣だったり、政府の官僚だったりと色々な「顔」をもった人物なんです。異なる雰囲気の顔を使うことで、その多面性を伝えることができているなと。
 また、背景は「百学連環」の覚書というメモから取ってきています。よく見ると分かるんですが、日本語とアルファベットが併記されていて、縦書きと横書きが混じっているんですね。西洋語が本格的に入ってきた際に、日本語がどのように変容するのかという問題は講座の内容にもかかわりますし、西のカオスな部分を象徴していて、ぴったりだと思いました。
小林 ブックガイドの表紙の似顔絵は太田さんが描かれたんですよね。あの周おじいちゃん、個人的にツボったんですが(笑)。

太田 はい、あれは勢いで書きました……。
石井 なんか剣豪っぽいですよね(笑)。髭の感じが特徴出ていてかわいくもあり。
小林 これらのヴィジュアルもそうですが、この西周講座のシリーズ「やっぱり知りたい!」シリーズとGACCOHが魅力的で。GACCOHについて、もう少し太田さんから教えて頂けますか。
太田 GACCOHというのは7年ほど前に当時の仕事を辞めて一年くらいフラフラしていた時、「大学時代もうちょっと勉強しときたかったなー、でも、いまさら大学通い直すのもめんどくさいしな...」→「なら自分のための学校を自宅につくればいいやないか」と貯金をはたいて自宅を自分で改装して学校(ガッコー GACCOH)をつくったのが始まりです。そこで「やっぱり知りたい!シリーズ」と銘打って自分が「やっぱり知りたい!」と思っていた哲学や科学や芸術といった分野に関する講座を企画し、若手の研究者に講師として来ていただいて、参加者を募りつつ自らも生徒として参加しています。始まりは自分のための学校でしたが、結果的にいろんな方が講座に参加してくださるようになっています。

小林 そういえば、GACCOHの発音問題が途中でありましたねえ(笑)。「学校」と同じ平坦に読む場合と、「ガッ」(↑あげて)「コー」(↓さげる)という。太田さんが、どっちでもいいということだったので、私は後者で発音してますが(笑)。
石井 私も鳥の「カッコウ」と同じイントネーションで読んでました。
小林 カッコウ(笑)。そうそう、同じだ―!(笑)
太田 どっちでもいいと言いつつ私は平坦に読んでいる派なのですが、最近やたらとカッコウ派が増えてきてヤバイ!と感じています(笑)。 
小林 ああっ(笑)。
太田 しかしこういうものは、人が呼びやすいように呼んで定着していくものなのかなと思っているので今は自然の成り行きに任せています...…。
小林 今回、受講生の方のレベルもとても高かったですよね。石井さんの研究者仲間の方もおられましたけれど、そうではない一般の方が、ご自分なりに当日の講座を聞いて、その感想と質問事項をまとめておられた。イベントで「ご質問は」というとご来場者の方が恐縮してしまって、手があがらないことも多いんです。今回は、すっすっ、と手があがって。
石井 ええ、本当に素晴らしい参加者の方々に恵まれました。僕も最初は質問時間が葬式のようになったり、謎の演説を開始しちゃう人がいたらどうしようなどとビビってたわけですが、本当に杞憂に終わりました。会場の雰囲気も良かったですし、質問も本質的な部分に切り込むものが多く、こちらが助けられたばかりか、時には冷や汗もかかされました(笑)。
太田 講座をやる上でいつも難しいなと感じていることは、参加者間の知識のレベル、問題関心が違う中で、いかに一つの講座を共有して楽しんでもらうか。ただ今回の西周に関しては皆さん一定程度知っているが、その先はよく知らない。前知識という面では参加者間の差が少なかったのかなと。だから質疑応答含め、いい雰囲気だったのかなと思っています。今から思うと「西周」という対象設定はかなり絶妙だったのではないかと(笑)。これから企画を考える上でいい経験をしましたね。
小林 受講生の方が「GACCOH」に興味をもたれたのか「西周」に興味をもたれたのか、「石井雅巳」に興味を持たれたのか、複数回答可で最終回アンケートとればよかったなあ。 そういえば、第二回は台風直撃で。あのときも開催できるのか、受講者の方こられるのか、また胃の痛い前日を迎え(笑)。当日、台風は逸れなかったですけど、外出不可レベルではない、雨が強いの範囲の時間帯で、受講生の方もお集まり頂けてよかったですね(笑)。
石井 しかも第二回の開催日には衆院選もありましたからね(笑)。開始時間になって、受講生の方が部屋にぞろぞろと入ってこられたときは目頭が熱くなりました。
小林 感動秘話! 石井さんは次の日、飛行機で津和野に帰れるか否や……、みたいな感じでしたが、夜中じゅうに無事台風も通過しましたし、懇親会も「日本語論」などで盛り上がって、これもまた良い回でしたね。
 あと、この講座を通じて、津和野に興味を持ってくださった方、「行ってみたい」とおっしゃって下さった方がおられたのもうれしかったです。
石井 そうですね! 町の職員としては、イベントを通して町をPRするという使命もありました。津和野は文化財もたくさんあって、良いところだと思うのですが、関東からのアクセスは決して良いとは言えないわけです……。そんなわけで、これを機に津和野という土地にも関心をもってくれたらと、スライドの扉の部分を写真付きの津和野紹介コーナーにしてみました。
小林 そうした受講者の方にとって「これから」の広がりがあることっていいな、と思うし、重要ですよね。私は、基本的には出版人、編集者なので、イベントは「本や読書につなげるためのイベント」という位置づけです。今回は、まず「石井雅巳さん」という若い方が新しいことをされていることを紹介したい!ということで、少し普段とは違うのですが、それがまた違うことに繋がっていくことの面白さを感じています。
 あとね、西周とか関心ない方も是非、津和野へ! 石井さんから頂いたマメ茶や葉ワサビの醤油漬けが美味しかった(笑)。食べ物おいしいところは良いところだ!
 東京の津和野T-SPACEへチラシを届けにいったときも「初陣」(津和野産の日本酒)のアイスを食べてまして、美味しかった(笑)。

◆これから!

石井 西周関連の事業ですと、出版事業が大きな柱になっています。西周の主要テクストの現代語訳や新しい全集をつくるという壮大な企画です。それを核にしながら、津和野を西周研究の拠点にしたり、西周を「地域資源」として捉えて、観光や教育などの分野で利活用できるようなインフラを整備していけたらなと考えています。僕自身は、西周でしっかり論文を書いて、なんとか研究として価値あるものも残していけたらなと思っています。
 あとは、津和野は西周森鷗外以外にもなかなか興味深い人物(岡熊臣、大国隆正、福羽美静・逸人、高岡直吉・熊雄兄弟などなど)を輩出しているので、そういった人々の紹介を津和野町東京事務所を使ってPRしていくのも面白そうだなと。
小林 GACCOHさんとのコラボについては、ひとつはnyx×GACCOHという講座を設けました。これはGACCOHさんで開催されている、今回の「やっぱり知りたい!」とはまた違って『nyx(ニュクス)』という思想誌を堀之内出版から発行しているのですが、この特集や企画を元にした講座シリーズです。
 「やっぱり知りたい!」よりは少し難しめになるかもしれませんが、雑誌からもう少し勉強したい、雑誌の論稿を読んでみたい、という方への補完的な、初学者でも参加可能な講座です。
 いま、募集中なのは『nyx』3号第一特集「マルクス主義からマルクスへ」と『マルクスとエコロジー』関連の講座として、斎藤幸平さんによる「マルクスと現代社会」三回講座。第一回は「マルクス主義新自由主義批判」で2017年12月16日(土)から開講の予定です。
 このnyx×GACCOHが今のところ2つ、2018年の開講予定(近日公開)があるのと、GACCOH全国出張版 東京編「やっぱり知りたい!」シリーズで1つ、2018年開講予定(近日公開)があります。
太田 小林さんとのコラボがぞくぞくと(笑)。今後ともよろしくお願いします。その他にも京都で「やっぱり知りたい!ジャック・デリダ」「やっぱり知りたい!ジャン゠リュック・ナンシー」「やっぱり知りたい!フェミニズム(仮)」が来年の一月からスタートします。
 あっ! もちろん京都に石井さんをおむかえしての「やっぱり知りたい!西周」の開催も予定しております。
石井 いやあ、どれも面白そうです。ぜひぜひ京都でもやらせていただきたいです!
小林 どれも楽しみですね! あと、実は太田さんと企画のご相談をしているときに、今回「全国出張版 東京編」と名付けているので、「全国」、東京以外の開催企画も実現してほしいなあ、と思ってます。太田さん、期待してます!(笑)
太田 そうですね。いろんな地域で開催していきたいですね。
「やっぱり知りたい!」という方がいる限り日本全国どこでも可能性はあります...!
小林 温泉があるところがいいな(笑)。
太田 それは確かに。ちなみに先日の西周最終回の京都への帰りに伊豆で温泉に入ってきました(笑)。
小林 いいなあ(笑)。そうやってみんなでぐるぐる全国まわりましょうー!
(終)

よはく舎 ロゴマーク公開

〔2020/08/31 13:01 に別媒体で発表した記事を転載しております〕

よはく舎のロゴをデザイナーの平山みな美さんに作成していただきました。社名の由来、またロゴマークのなりたちを記します。

画像1

よはく(余白)

よはく舎の「よはく」は「余白」です。英語では「margin」、その元のラテン語である「margo」は「縁」という意味です。これらの「中心ではない位置/外側への広がり/これから書き込まれていく場所」へむけてコンテンツを提供するイメージで命名しました。また、よはく舎のブランドのひとつである「nyx(ニュクス、意味:夜)」がやがて迎える薄明をよはくと捉え、「光/これからのスペース/到来する未来」のイメージも重ねています。
ロゴの制作を考えた時に、意味が「本の余白」だけであれば、それだけを具体的なモノとして提示できますが、このように複層的なイメージをどう落とし込んでもらうか、ということを悩みました。平山さんにご相談するなかで「例えば好きな動物などはありますか?」と示唆していただき、でてきたモチーフが「クロウタドリ」です。

クロウタドリ

この黒い鳥は(大勢の日本在住者は黒い鳥=カラスを思い浮かべると思いますが……)、クロウタドリです。これはThe Beatlesの曲《Blackbird》をモチーフにしています。

赤ん坊のころから、私はレコードや父の弾き語りでこの曲をずっと聴いていました。つらいとき、悲しいとき、父とこの曲、そしてカトリック系の幼稚園でシスターから頂いた聖書(The Book)がありました。それが私の文化と読書の出発点です(大人用の聖書が読めるようになるのは少し後でしたが)。

《Blackbird》はジョン・レノンポール・マッカートニーの共同名義、レノン=マッカートニーとなっていますが、実質はポール・マッカートニーの単独作品として知られています。
この曲は公民権運動が盛んだった1957年におきた「リトルロック高校事件」に着想をえて作曲されたそうです。
ポール・マッカートニー、“Blackbird”を書くきっかけになった二人の黒人女性と対面、2016年5月2日、NME JAPAN)
アフリカ系アメリカ人、女性の人権擁護や解放について応援する歌詞に、優しいアルペジオと足のタップが付されたシンプルで美しい曲です。

Blackbird singing in the dead of night
Take these broken wings and learn to fly
All your life
You were only waiting for this moment to arise

真夜中にクロウタドリさえずる
傷ついた羽で飛び立つ 飛べるようになるためにと
これまでの人生でずっと
あなたはひたすら待ち続けていた 飛び立つこのときを
Blackbird fly Blackbird fly
Into the light of the dark black night

クロウタドリは飛ぶよ クロウタドリは飛ぶよ
暗い闇夜の中の光へむかって

クロウタドリは日本でのカラスのように、イギリスやヨーロッパでは都市部でも普通に見られる野鳥です。ヨタカのように夜行性ではないそうで、おそらくポールもそうしたことを知っているでしょうけれど、その鳥が真夜中から光を目指して飛びたつ、という架空のイメージでこの詞は描かれています。
1957年のリトルロック高校事件、60年代に盛んだった公民権運動はいくつもの成果を得ました。しかし、それから約半世紀たった2020年現在、#BlackLivesMatter が起きていることなど、いまだアフリカ系アメリカ人の人権は万全ではなく、同様に女性の人権もまだ十分に保障されていません。私たちは、まだ「傷ついた(傷つけられた)」羽で立ち上がり、声をあげなければいけないのです。

新しい未来(よはくの向こう)へ向かって、傷ついた羽(broken wings)、落ちくぼんだ眼(sunken eyes)で暗い闇夜から飛び立つイメージは、よはく舎のシンボルとしてとてもぴったりくるものでした。
ただし、公民権運動に着想を得た作品を、アフリカ系アメリカ人ではない日本の企業がモチーフとして扱うことに問題はないか、ということも考えました。
何人かの国内外の知人にも相談し、運動内部の作品ではないこと(背景のエピソードとして知られてはいるけれど、一般的に運動の作品として強く意識されておらず、また作者のマッカートニー自身も運動内部のポジションではないこと)、中傷ではなくエンパワメントの意図に賛同の意で用いることなどから文化的盗用、搾取、同化にはあたらず差支えないと判断しました。
ただ、こうした背景も読み込んでロゴのシンボルとすることに恥ずかしくない活動を、という意識は常に持ちたいと思います。

ロゴタイプ

「よはく舎」という文字の書体は平山さんが「NUDモトヤ明朝」を選んでくださいました。モトヤ書体は、朝日新聞社の本文用明朝体を彫った太佐源三氏が1953年にゴシック体を、1954年に明朝体を完成させた端正でありながら可読性が高い書体です。

画像2

明朝体は他にももっと流麗なものなどもありますが、少しクラシカルな印象であったり、より硬い印象になったりします。この書体はユニバーサル書体であること、また「モダンで柔らかい印象もある書体」とご紹介頂き、よはく舎のコンセプトに合うものとして、とても気に入っています。

ロゴと歩む今後

改めて、素敵なロゴを作成してくださったデザイナーの平山みな美さんに御礼申し上げます。

そして、最後にもうひとつポール・マッカートニーの名曲を。
《We All Stand Together》

国際的な知名度はそれほど高くないのですが、イギリスの人気キャラクター「ルパート(Rupert Bear)」のアニメ、「ルパートとカエルの歌」の主題歌としてつくられた歌です。

上記の動画ではカットされていますが、アニメの冒頭とラストにはポール・マッカートニー自身が出演しており、その舞台としてロンドンの書店Jarndyce Bookshopが使われています。

こちらも《Blackbird》と同様に美しい、カエルを模したコーラスがユーモラスな3拍子の夜の歌です。

Walk in the night
You’ll get it right
夜に歩き
あなたたちは正義を手にいれる
Arm in arm, hand in hand
We all stand together
腕に腕を、手に手をとり
私たちはみんな共に立ち上がる

よはく舎のロゴのなかで、傷ついた羽と落ちくぼんだ眼をもつクロウタドリは、進行方向にではなく首をひねって月を見上げています。そのまま進むのではなく、あえて光にむきなおり、小さなさえずりをあげようとしています。
そんなクロウタドリと同じく、小さな版元として改めてスタートをするよはく舎は、弱弱しく、いさましい強いちからはもっていません。
しかし、その暗い闇夜、弱い場所から発信するものが、だれかを助ける糧になること、美しい幸せのもととなることを信じて、それでも――、暗い闇夜から首をひねり、余白(margin)の外、光へむかって、クロウタドリとともに、よはく舎も飛び立ちます。
その先で、多くの仲間と手に手をとり、共に立ち上がる未来を夢見て。

夜は更けて、日が近づいた。だから、闇におこなわれる業をすてて、光の甲(よろい)をつけよう。
(ローマ人への手紙13.12)

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※上記歌詞の訳詞は既訳を参考にしながら、小林えみ が翻訳しました。you が単数なのか複数なのか、などの細かい判断は公式の確認をとったものではなく、前後をふまえての小林の判断とご理解ください。

 

よはく舎newsまとめ(2017~2019年)

よはく舎での2017~2019年の活動をまとめています。

*2019/12/22 【イベント開催】「ヘーゲル(再)入門ツアー 2019→2020」 川瀬和也

*2019/10/06 【イベント開催】『西周と「哲学」の誕生』『西周 現代語訳セレクション』『在野研究ビギナーズ:勝手にはじめる研究生活』トリプル刊行記念—–やっぱり知りたい!西周リターンズ&在野ビギナーズ—– 石井雅巳

*2019/08/31 【講師】浄土複合ライティング・スクール2019にてゲスト講師

*2019/08/24 【イベント開催】「『概念工学』入門ツアー:推論主義から社会変革の哲学へ」松井隆明 サマーキャンプ(集中講義)

*2019/06/29 【イベント登壇】戸田市男女共同参画フォーラム「出版界で活躍する女性たち」にて講演

*2019/06/07 【イベント登壇】CONFERENCE "NATURE TECHNOLOGY METAPHYSICS" (JUNE 6 & 7, 2019)にてスピーチ(記事公開)

*2019/05/28 【イベント登壇】日本出版学会出版編集研究部会「独立系出版社の編集デザイン」にて上田宙氏、宮後優子氏と登壇(記事公開)

*2019/04/20 【イベント登壇】『なぜオフィスでラブなのか』刊行記念トークイベント「職場と時代と女と男」 rebelbooks(高崎市

*2019/03/10 【イベント登壇】「哲学者と編集者で考える、<売れる哲学書>のつくり方」に小林えみが登壇 配布資料がマガジン航にて公開「所感:2010年代の日本の商業出版における著者と編集者の協働について、営業担当者と書店との協働について」

*2019/03/10 【イベント開催】「ヘーゲル(再)入門ツアー 2019 東京編」川瀬和也 

*2019/03/03 【イベント登壇】「話題の編集者と考える本のこと~第1回なぜ今、本を読むのか~」に小林えみが登壇 週刊読書人にて記事公開

*2019/03/03 【フェア/選書】「話題の編集者と考える本のこと~第1回なぜ今、本を読むのか~」にて選書

*2019/01/24 【ゲスト講義】早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系

*2018/09/01 【イベント開催】nyx×GACCOH「マルクス現代社会」東京編 斎藤幸平

*2018/07/16 【フェア/選書】ときわ書房志津ステーションビル店さんフェア企画「第4回ときわ志津佐倉文庫フェア「「愛」についてのこの1冊」に選書参加(坂口安吾『青鬼の褌を洗う女』)

*2018/07/14 【イベント登壇】「『NO BOOK NO LIFE -Editor's Selection- 編集者22人が本気で選んだ166冊の本』刊行記念ブックトーク!」に小林えみが登壇

*2018/06/30 【フェア/選書】『日本のヤバい女の子』(柏書房)の刊行記念フェアにて選書

*2018/06/20 【出版/選書】『NO BOOK NO LIFE -Editor's Selection- 編集者22人が本気で選んだ166冊の本』(雷鳥社)に選書が収録。

*2018/05/20 【イベント開催】nyx×GACCOH「やっぱり知りたい!トマス・アクィナス -はじめてのスコラ哲学- 」

*2018/04/07 【イベント開催】nyx×GACCOHレクチャー 「マルクス・ガブリエル入門」浅沼光樹

*2018/03/13 【イベント登壇】「ママ起業家プレゼン mi ra i 2018@TOKYO創業ステーション」 トークセッションに小林えみが登壇

*2018/03/13 【イベント開催】「小規模出版社のしごと」にて、小林えみ 講演

*2018/02/10 【イベント開催】GACCOH全国出張版「やっぱり知りたい! 技術と哲学の臨界点」東京編 セバスチャン・ブロイ

*2017/12/16 【イベント開催】nyx×GACCOHレクチャー「マルクス現代社会」斎藤幸平 開催

*2017/10/21 【イベント開催】オーサービジット@東京堂書店「書店を著者と巡る」江川純一×佐々木雄大「聖なるものを読む」

*2017/10/01 【イベント開催】オーサービジット@東京堂書店「書店を著者と巡る」藤田直哉×長瀬千雅「アートフェスを読む」

*2017/08/26 【イベント開催】オーサービジット@東京堂書店「書店を著者と巡る」都甲幸治×下平尾直「狂喜の読み屋と世界文学を読む」

*2017/08/23 【イベント開催】「独立系女性版元の はたらきかた」
レポート記事「女性たちが「1人出版社」を起業した理由

*2017/08/20 【イベント開催】オーサービジット@東京堂書店「書店を著者と巡る」戸谷洋志 「哲学としてのポップカルチャーを読む」

*2017/08/13 【イベント開催】オーサービジット@東京堂書店「書店を著者と巡る」河野真太郎×伊澤高志「英文学と恋愛を読む」

*2017/08/01 【展示】-09/ 写真・北原徹「scholars」東京堂書店 階段スペース

*2017/07/16 【選書】-09/03 ときわ書房志津ステーションビル店さんフェア企画「第3回ときわ志津佐倉文庫フェア「若き人(あなた)に勧めるこの1冊」に選書参加(キャサリンマンスフィールドマンスフィールド短編集』)開催

​*2017/07/15 【イベント登壇】『POSSE』vol.35刊行記念イベント「学生がつくる働き方雑誌の続く理由」/時間:15時~/会場:しばしば舎/詳細

*2017/07/08 【イベント登壇】絵本『ウラオモテヤマネコ』トークイベント/時間:19時~/会場:ブックスキューブリック箱崎店/詳細

*2017/06/11 【選書】-06/18 井上奈奈個展「誰も知らない話  12冊 × 12人 本とアートの間より」(ギャラリー枝香庵/銀座)に選書参加(アンナ・カヴァン『氷』)

学術翻訳書の翻訳のあり方について(朱喜哲氏によるツイート転載)

2020年10月にロバート・ブランダム『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか』(上・下、勁草書房)を共訳された朱喜哲(ちゅ・ひちょる)さんが、学術翻訳について2020年10月24日にツイートをされました。学術翻訳の翻訳の進行についてなど、多くの研究者へ示唆に富む内容であったため、ご本人の許可を得て転載、nyx編集担当による、版元の立場からのコメントを付させて頂きました。

朱喜哲氏所感

(以下、連続ツイートを転載)
それにしても学術書翻訳を初めて体験して、過去のあらゆるタイプの仕事のなかでも(自分たち自身の)要求水準を満たす難易度がもっとも高く、ひとえに自分の勉強と日本語哲学への貢献以外にはインセンティブもない仕事なので、あらためてこれだけ翻訳を重ねて来た先人たちへの敬意を新たにしました。

評価は読者に委ねるほかありませんが、今回やってみて学術書翻訳は「①同書の原語での議論状況をフォローできている人」複数が「②対等にレビューしあえるチーム体制」で臨むのがよいなと感じました。その点で、博士後期〜初期キャリアの研究者がチームを組むのがいいと思いますが、いくつか問題も。

ひとつに出版社とのアクセスが限られる点で、これは機会平等の観点はもちろん、アクセスを持つ一部の人が<若手>に下訳を振る構図を生みがちで、場合によっては「搾取」とまで言えそうなケースも知っています。また総じて翻訳の業績評価が低い(複数人の場合はなおさら)ことも逆インセンティブ要因。

翻訳書の質・量的な充実は、当該分野の裾野の広がりを象徴する指標で、哲学の場合には過去、つまりちょうど退官される時期になった団塊世代の先生方の業績量を思うと、今後ここが痩せ細っていくことは残念ながら避けがたいですが、それだけに優れた訳業を業界で顕彰するとか、価値を高めたいですね。

日本翻訳大賞」みたいな活動によって、わたしも手に取る文学系の訳本が増えましたし、業界内の評価が広く可視化されるのは読者にも後進にとっても、極めて有益だと思います。学術書の訳業の評価は、文学とはまた違ってしかるべきですし、選評とかも聴いてみたいところ。


小林えみ所感

 技術書や科学、どんな分野でも翻訳は簡単なことではないと思いますが、とりわけ人文系の学術書翻訳はとても手間のかかる作業のように思います。まず書かれた言語についての理解が必要なことは他分野とも共通のこととして、確定的な事実(例:AさんがB市で〇月〇日講演をした)や数式とも異なる、論理的ではあるけれども、ある種の不確かさも含んだ人の思考を、別の言語(日本語)で、その界隈の日本語の術語も把握しながら、また、ときには元の言語では共有されている文脈や事実関係を補完しなければいけません。西洋哲学思想界隈では欧文からの翻訳が多いですが、欧米圏内もひとくくりにはできないとはいえ、英語をフランス語に翻訳やドイツ語を英語に翻訳するより、日本語というまったく違う言語圏への翻訳は、より大変だということは想像にかたくありません。日本では欧米語のまとまった翻訳の緒をひらいた西周をはじめ(『西周と「哲学」の誕生』をご参照ください)そのような仕事が脈々と積み重ねが、現在の日本での哲学思想の発展に寄与してきました。
 しかし、辞書もないなかで手探りの翻訳をしていた時代もその大変さはあったとはいえ、現状の研究者が置かれている研究以外の校務の多さ、また日本語ネイティブ人口減少(ありていにいえば読者人口の減少、興味関心か否かの問題ではない全体的な売上減少のトレンド)の中で、研究者、また商業出版の版元が、どのくらい「翻訳出版」に力をそそいでいけるかは、昔とは違う困難をかかえ、非常に悩ましいと言わざるを得ません。
 朱さんがお書きになられたように、「要求水準を満たす難易度がもっとも高く」、それでいて「自分の勉強と日本語哲学への貢献以外にはインセンティブもない」。素晴らしいお仕事に版元が経済的なインセンティブを付与することができれば、なお良いことだとは思いますが、上記のトレンドの中ではいずれの版元においても「十分な」お支払、経済的な報いは難しい、というのが率直な現状でしょう(もちろん、例外はあるとして、一般的には)。
 支払が十分とはいえない、ということについては、経費負担として翻訳には原著への翻訳権料の支払いとの兼ね合いもあります。原著への尊敬と尊重は必要ですが、専門度の高い書籍において、文芸や一般書とも共通する相場や契約の文言は見合っているのだろうか、と考えることもあります。ありていにいえば学術の翻訳の契約料はもっと安価で長期間の保証があってもいいように思います。ただし、期間については、事実上の絶版が他社で契約できない、というような弊害をさけるために、長期契約の場合は独占の事項は外す、などが考えられます。
 朱さんが提議された「学術書の訳業の評価」も、時折話題にあがることですが、こうしたことは学術界隈、また出版など関連業界において、真剣に検討はできることだと思います。
 厳しい研究・社会状況の中で、研究者の方たちの方たちが 労苦をひきうけ、世に出された成果は、必ず世の役にたつでしょう(学術の成果が端的な有用性を基準とすべきか、という点は一旦措くとして)。翻訳書が日本語で刊行される意義を、その成果を正当に評価しつつ、今後、その制作環境や評価について、また頒布のされ方について、訳者・版元・読者をまじえ、さらに議論が広がることを願っています。

ロバート・ブランダム『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか』(上・下)加藤 隆文/田中 凌/朱 喜哲/三木 那由他
プラグマティズムは死なず! 分析哲学ドイツ観念論を経由して、過去から現在に至るプラグマティズムを生き生きと蘇らせる。

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第41回「石橋湛山賞」受賞 山本章子氏インタビュー

2020年9月25日に発表された第41回「石橋湛山賞」を『日米地位協定――在日米軍と「同盟」の70年』(中央公論新社、2019 年5月刊)で受賞された琉球大学人文社会学部准教授・山本章子さんにメールでのインタビューを行いました。(インタビュー収録:2020年9月30日)

 石橋湛山賞の受賞、おめでとうございます。本書刊行後に、中公新書さんのウェブサイトでインタビューも公開されていますので(2019/11/07著者に聞く 『日米地位協定』/山本章子インタビュー)、ご執筆の経緯などはそちらにゆずるとして、もう少し細かい部分や、その後について、今回はお伺いさせてください。
 2017年に博士論文を書籍化された『米国と日米安保条約改定――沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年、日本防衛学会猪木正道賞奨励賞)と書き下ろしの『米国アウトサイダー大統領――世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)を刊行されてから、2年後の2019年に『日米地位協定』を刊行されておられます。短期間で非常にすばらしいお仕事をされておられますね。

山本 2017年に単著を2冊書き、2019年に3冊目の単著となる『日米地位協定』を出したのは主に就職のためです(笑) 現在は研究者の就職状況が非常に厳しい。特に大学に専任教員として就職するのは狭き門で、私の専門分野である国際関係論の研究者はシンクタンクで働く方も増えています。研究者の就職は基本的に業績で決まるので、とにかく業績を増やすことに必死でした。
 私の場合、出版社の仕事をへて35歳で博士号をとったので、人より抜きんでた業績がないと就職できないと思い、学会誌掲載論文や共著論文と並行して単著の執筆にも取り組みました。結果的には、『日米地位協定』を書いている最中に現在の勤務先への就職が決まりましたが。

 石橋湛山賞の受賞は周囲からの祝福の声は多くあったかと思いますが、ゼミの学生さんたちなどからも反応がありましたでしょうか。

山本 沖縄には沖縄タイムス琉球新報という地元紙があり、その二紙が受賞を報じてくれたので、記事を見た学生が卒業生も含めて祝福のラインをくれました。

 卒業生の方も、先生のご活躍が嬉しかったのでしょうね。勉強中の学生さんの励みにもなったことと思います。ご自身の学生時代に関して、中公新書のインタビューで「すでに学部と修士課程で外交史の手法を身につけた後だったので、専門を変えませんでした」とお答えになられています。途中で手法・分野を移動することの大変さもあるからだとは思いますが、外交史の面白さや魅力をお感じになられていたからかと拝察いたします。法学・政治学・政治哲学ではなく「史学」、歴史を扱うことの魅力などがあれば教えて下さい。

山本 私の場合、現代史が専門なので、歴史といってもまだ当事者や関係者が生きている、つまり現在にそのままつながるテーマを研究しています。現代史というのは、現在進行形の事象を分析するのではなく、その起源や現在に至る経緯を分析する学問だと思います。いま起きていることを背景や紆余曲折も含めて総合的に見るというのは、問題を指摘するときには不可欠な作業だと思います。

 安倍前政権において「公文書の廃棄」が問題となりました。その後、様々なイシューがあるなかで、一般の関心が薄れているように思います。ただこれはその事件だけということでなく、歴史性に対して問題があると思うのですが、何かお考えがあればおきかせください。

山本 そもそも、戦後日本の官僚や政治家が公文書の保存に熱心だったことはほとんどありません(笑)外務省は外交史料館をつくって、他省庁に比べればきちんと公文書の管理をしていますが、日米安全保障条約や日中国交回復に関する公文書は、破棄や書き替えがあったと言われています。
なので、いかに日本政府の公文書を当てにせず、新聞、当事者・関係者へのインタビュー、外国政府の公文書などありとあらゆる情報をかき集められるかが大事になります。逆にいうと、公文書を廃棄しても事実の完全な隠ぺいはできないので、ばれたら問題になるようなことはしない方が政府のためじゃないでしょうか(笑)

 2020年9月24日、毎日新聞「月刊・時論フォーラム」で「利害より倫理」を発表されておられます(毎日新聞「月刊・時論フォーラム 利害より倫理」、リンク先は有料記事)。
 さまざまな人的理不尽が「利害関係」をもとに生まれることに対して、それをチカラで封殺することはできたが、そもそも「倫理」が必要ではないか、ということを提示されておられます。もう少し具体的にどのような倫理を求められておられるのか、教えて下さい。

山本 そんなに難しいことではなく、一歩間違えば学生の一生を台無しにしかねないようなことをした指導教官に対して、その後も同様の被害にあう学生が出ないように大学が措置を講じるべきだと考えています。私が在籍した大学の学科は、一人ではなく複数人の指導体制をとったり、相談員制度をもうけたり、元の指導教官の許可なしに指導教官を変えることができるようにしたりしています。それでも、指導教官が自分以外の言うことを聞かないよう学生に強制したり、相談員が同じ学科の教授陣で同僚をかばう発言をしたりということがありました。何より、指導教官と学生の間に起きたことを一切公表しない。どうせ狭い大学内で人づてに名前は伝わりますから、起きたことは匿名で公表して記録にも残し、教員にも学生にも注意喚起をすべきです。

 現政権が高齢男性ばかりであることが批判されており、単純にその属性だから問題、ということではなく、似たような属性の人が意思決定機関に集中することでの判断の偏りが懸念材料とされているのだと思います。

山本 所属している国際政治学会は女性が多く、理事長はじめ重要ポストにもふつうに女性がつきます。また、学会年次大会の部会・分科会や科研の共同研究でも、年齢バランスやジェンダーバランスは偏りがないように考慮されています。というか、年齢やジェンダーのバランスが悪い研究企画は、いまは審査で落とされます。そういう場では、ハラスメントを行う研究者は自然淘汰されていくのか、不愉快な経験をしたことはそんなにありません。
 なので、年齢やジェンダーエスニシティや出身地、キャリアパスなどの多様性を組織の構成条件にすることは、ハラスメントを防ぐためにとても重要だと思います。

 今回の受賞作も含め、日米関係について、史料に基づき深く、一方で明解に歴史的な意味を鮮やかに見せて下さる成果にとても注目しております。今後については、中公新書のインタビューで「次は1970年代末、米ソのデタント(緊張緩和)が崩壊し、新冷戦に向かう時期の日米関係を研究したいと考えています。」とお話されています。こちらもとても期待しています。個人的には論文「アイゼンハワー政権の対ソ文化交流:クラシック音楽を事例に」も少し他とは違うテーマで面白く拝読いたしました。こうした文化についてなど、またお書きになりたいな、ということなどありますでしょうか。

山本 今後研究したいテーマはいろいろあるのですが、7年半住んでいる沖縄とその周辺では日々、日米安保に由来する様々な問題が起きており、他人事ではいられない場面も増えてきました。他のテーマにいくまえに、日米地位協定の問題をさらに深めて考察しないといけなさそうです。

 大学にご所属の研究者は「教育・後進育成」もお仕事のひとつかと思います。教育に関して、何かお考えはありますでしょうか。

山本 沖縄は観光や地方自治日米安保などさまざまな問題の最前線なので、沖縄の大学生には本を読むことに加え、学生時代しかできない、現場を目で見て当事者の話を聞いて考える貴重な機会をたくさん持ってほしいと思っています。なので授業では、フィールドワークや基地見学、国会議員や官僚や県庁職員の講演などさまざまな企画を実施しています。

 現在、沖縄に関してテーマにされているということもあり、ご所属も含めて日本・沖縄という土地との結びつきは研究上の必然もおありかもしれませんが、「日本語」圏内での活動にとどまらず、国際的な共同研究や発表の場などの発展をお考えであれば、差支えない範囲で教えて頂けますでしょうか。

山本 沖縄は、米軍基地に由来する問題で世界中から注目されていますので、海外からさまざまな研究者が視察や意見交換で訪れます。それで自然と、国際的な基地問題の比較研究プロジェクトに呼ばれたり、海外で沖縄の基地問題について発表する機会を与えられたりしています。

ありがとうございました。今後ますますのご活躍を期待しております。

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『日米地位協定――在日米軍と「同盟」の70年』(中央公論新社、2019 年5月刊)

山本章子
1979年北海道生まれ。2003年一橋大学法学部卒業、2007年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。2007年から2012年まで第一法規株式会社に編集者として勤務、2015年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。沖縄国際大学非常勤講師を経て、2018年から琉球大学人文社会学国際法政学科講師、2020年より同准教授。専攻は国際政治史。

著書/共著
米国と日米安保条約改定――沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年、日本防衛学会猪木正道賞奨励賞)
米国アウトサイダー大統領――世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)
共著『沖縄と海兵隊――駐留の歴史的展開』(旬報社、2016年)
共著『日常化された境界――戦後の沖縄の歴史を旅する』(北海道大学出版会、2017年)